第93回 「スクラップ問題」
Author : セルナジャヤ 森
Posted: 2013-04-15 00:00:00 | Category: 時事速報インドネシア
Share this post :
生産活動を行うことで発生するスクラップ(切りくず、 くず鉄)。インドネシアでは現地従業員の給与が低い半面、金属などのスクラップ価格が相対的に高いため、業務上の立場を利用して稼ぐという発想に従業員が 傾き、問題が発生することがあります。特にメーカー勤めの日本人駐在員は技術者が多いとされ、経理や購買はインドネシア人従業員任せという会社も少なくあ りません。最近は会社の設立ラッシュにより、次のようなスクラップ問題に巻き込まれる企業が増加していますので、どうかご注意いただきたいと考えます。
◇インドネシアのスクラップ業者について
東部ジャワ州マドゥラ島出身のマドゥラ人が、ジャワ島内で廃品回収の仕事に多く携わっていた経緯から、現在では、マドゥラ人がジャワ島のスクラップ利権の多くを掌握しているとされています。
◇購買マネジャーが不正
ある日系メーカーで、購買マネジャーがスクラップ業者から定期的にキックバックや高級車などの贈与を受けていることが、従業員からの内部告発で発覚しまし た。深く調査したところ、他の経理、人事、製造の各部門のマネジャーたちも関与している疑いも判明しましたが、決定的な証拠が得られなかったため、解雇処 分には踏み切りませんでした。
しかし、不正を正す必要があると判断し、日本人社員を購買のアドバイザーに就けて監視を強めたところ、購買マネジャーと経理マネジャーが自主退職する運びとなったようです。今後は再発を防ぐため、銀行振り込みで支払いが可能な業者を選定していきたいとのことでした。
◇日本人の承認による予防策
ある設立間もない日系メーカーで、採用した人事マネジャーから「そろそろスクラップ業者の選定をしませんか」との提案を受け、日本人社長は複数の業者を選 考するよう彼に指示しました。しかし、このマネジャーが特定の業者を推薦し続けたため、社長は不審を抱き、社長決裁で別の業者に決定したところ、翌週から このマネジャーが失踪したとのことでした。
決定的な証拠は押さえていないものの、業者との内々の約束が果たせず、また業者より高額な金銭の贈与 を受けていたため、逃げたのではないかと考えられています。この会社はそれを機に、金銭に絡む業務では日本人社長の承認を得ることとし、経営陣の関与を強 める方針となったようです。
◇人事マネジャーに権限集中
従業員50人程度のある日系メーカーでは、少数精鋭で人件費予算を節 約していたことから、日本人社長が得意とする製造以外の多くの部門を1人の人事マネジャーに任せていました。「他社よりも少ない給与で真面目に働いてい る」と社長もそのマネジャーを評価していましたが、マネジャーが200万円相当の新車で通勤するようになり、また新築の豪邸を持っているとの話も従業員か ら伝わったため、身辺調査をしたところ、車を他に3台所有し、不動産を複数持っていることが判明しました。
従業員の密告もあり、そのマネジャー と部下数人がスクラップに絡んでいるという疑惑も出たようです。しかし、社内の混乱を防ぐために解雇処分はせず、権限を1人の従業員に集中させてしまった ことを反省し、権限の分散化と承認プロセスの変更に踏み切ることで対応したようです。
こうしたスクラップ問題は、一般的には複数の従業 員が絡んでいることが多いとされるため、従業員の解雇を急ぎ、問題を大きくするよりも、会社の体質改善を行い“不正が行いづらい環境づくり”に徹すること が重要なのかもしれません。
(時事速報インドネシア便掲載)
Author : セルナジャヤ 森
Posted: 2013-04-15 00:00:00 | Category: 時事速報インドネシア
Share this post :
Tweet |
第93回 「スクラップ問題」
【インドネシア雇用事情】第93回 「スクラップ問題」生産活動を行うことで発生するスクラップ(切りくず、 くず鉄)。インドネシアでは現地従業員の給与が低い半面、金属などのスクラップ価格が相対的に高いため、業務上の立場を利用して稼ぐという発想に従業員が 傾き、問題が発生することがあります。特にメーカー勤めの日本人駐在員は技術者が多いとされ、経理や購買はインドネシア人従業員任せという会社も少なくあ りません。最近は会社の設立ラッシュにより、次のようなスクラップ問題に巻き込まれる企業が増加していますので、どうかご注意いただきたいと考えます。
◇インドネシアのスクラップ業者について
東部ジャワ州マドゥラ島出身のマドゥラ人が、ジャワ島内で廃品回収の仕事に多く携わっていた経緯から、現在では、マドゥラ人がジャワ島のスクラップ利権の多くを掌握しているとされています。
◇購買マネジャーが不正
ある日系メーカーで、購買マネジャーがスクラップ業者から定期的にキックバックや高級車などの贈与を受けていることが、従業員からの内部告発で発覚しまし た。深く調査したところ、他の経理、人事、製造の各部門のマネジャーたちも関与している疑いも判明しましたが、決定的な証拠が得られなかったため、解雇処 分には踏み切りませんでした。
しかし、不正を正す必要があると判断し、日本人社員を購買のアドバイザーに就けて監視を強めたところ、購買マネジャーと経理マネジャーが自主退職する運びとなったようです。今後は再発を防ぐため、銀行振り込みで支払いが可能な業者を選定していきたいとのことでした。
◇日本人の承認による予防策
ある設立間もない日系メーカーで、採用した人事マネジャーから「そろそろスクラップ業者の選定をしませんか」との提案を受け、日本人社長は複数の業者を選 考するよう彼に指示しました。しかし、このマネジャーが特定の業者を推薦し続けたため、社長は不審を抱き、社長決裁で別の業者に決定したところ、翌週から このマネジャーが失踪したとのことでした。
決定的な証拠は押さえていないものの、業者との内々の約束が果たせず、また業者より高額な金銭の贈与 を受けていたため、逃げたのではないかと考えられています。この会社はそれを機に、金銭に絡む業務では日本人社長の承認を得ることとし、経営陣の関与を強 める方針となったようです。
◇人事マネジャーに権限集中
従業員50人程度のある日系メーカーでは、少数精鋭で人件費予算を節 約していたことから、日本人社長が得意とする製造以外の多くの部門を1人の人事マネジャーに任せていました。「他社よりも少ない給与で真面目に働いてい る」と社長もそのマネジャーを評価していましたが、マネジャーが200万円相当の新車で通勤するようになり、また新築の豪邸を持っているとの話も従業員か ら伝わったため、身辺調査をしたところ、車を他に3台所有し、不動産を複数持っていることが判明しました。
従業員の密告もあり、そのマネジャー と部下数人がスクラップに絡んでいるという疑惑も出たようです。しかし、社内の混乱を防ぐために解雇処分はせず、権限を1人の従業員に集中させてしまった ことを反省し、権限の分散化と承認プロセスの変更に踏み切ることで対応したようです。
こうしたスクラップ問題は、一般的には複数の従業 員が絡んでいることが多いとされるため、従業員の解雇を急ぎ、問題を大きくするよりも、会社の体質改善を行い“不正が行いづらい環境づくり”に徹すること が重要なのかもしれません。
(時事速報インドネシア便掲載)