第97回 「運転手の残業」
Author : セルナジャヤ 蛇草
Posted: 2013-08-20 00:00:00 | Category: 時事速報インドネシア
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今年1月に最低賃金が上昇したことに伴って、人件費の予算を修正した企業も多かったことと思います。最低賃金が上昇すると、まず基本給が上昇し、他の賃金のさまざまなところに影響しますので、修正後の数値に驚いた方も多いのではないでしょうか。
基本給の上昇に伴い、最も予測しにくいのが残業手当ではないかと思います。日本の感覚ですと残業手当というのは、固定給をベースに算出された金額から少し 上乗せされた時間給与です。しかし、ここインドネシアでは事情は異なります。インドネシアの労働法により定められた残業手当は、平日は、最初の1時間のみ 1.5倍の時間給与ですが、2時間目以降は2倍になります。休日(会社の定める休日)は1~8時間目は2倍、9時間目は3倍、10時間目以降は4倍にもな ります。
例えば、運転手の場合、土曜日の午前5時から運転手を待機させ、午前5時30分に家を出てゴルフに出かけ、終わってマッサージに行って 買い物をして午後6時に運転手を解放したとしましょう。拘束時間は13時間ですが、労働法に基づく休憩時間分が差し引かれ、12時間が残業手当の対象とな ります。2×8時間+3×1時間+4×3時間=31時間となり、31時間分の労働になります。1日8時間が基準ですから、まさに4日分弱の賃金に相当する わけです。土日に働きたがる運転手が多いのはこういうわけです。
平日でも、日本人の送迎を担当する場合、朝と晩は必ず残業が発生してしまいます。通勤手段の確保は、安全の確保でもありますから、避けようのないことですが、送迎だけに使用せず、日中の社内業務に積極的に転用したいものです。
このような状況で起こりがちなのが、給与の逆転現象です。たとえば、オフィスで働く新卒(大学卒)の給与ならば、運転手の給与の方が上になってしまうこと は決して珍しくありません。管理者・経営者からすると複雑な思いがするのではないでしょうか。また当然ですが、運転手の給与については、特に他の従業員に 漏れないようにしなければなりません。運転手という職種は、オフィスで働く者からは下に見られることの多い職種です。自分の給与が運転手の給与より低いこ とに対して、プライドが刺激される従業員は多いはずです。また運転手同士であっても、誰の送迎を担当するかで残業時間に差が出てきますから、こちらもロー テーションするなどの工夫が必要かもしれません。
インドネシアでは、連続勤務に対する法律的な制約はありません。平日に続いて土日も ずっと出勤させても残業手当さえきちんと払えば、法律上問題になることはありません。だからといって連続勤務させても、誰のためにもなりません。やはり運 転手にも疲れがたまりますから、注意力が散漫になり、事故を起こしやすくなります。いつもの慣れた運転手を使いたくても、休ませて別の運転手を使うことを 検討するべきかもしれません。当の運転手は稼ぎたいがために、「出勤OKです」「体は大丈夫です」などといいますが、現実問題として、わが身の安全を第一 に考えた場合、最低でも週に1日は休ませるのがベストと言えるでしょう。
(時事速報インドネシア便掲載)
Author : セルナジャヤ 蛇草
Posted: 2013-08-20 00:00:00 | Category: 時事速報インドネシア
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第97回 「運転手の残業」
【インドネシア雇用事情】第97回 「運転手の残業」今年1月に最低賃金が上昇したことに伴って、人件費の予算を修正した企業も多かったことと思います。最低賃金が上昇すると、まず基本給が上昇し、他の賃金のさまざまなところに影響しますので、修正後の数値に驚いた方も多いのではないでしょうか。
基本給の上昇に伴い、最も予測しにくいのが残業手当ではないかと思います。日本の感覚ですと残業手当というのは、固定給をベースに算出された金額から少し 上乗せされた時間給与です。しかし、ここインドネシアでは事情は異なります。インドネシアの労働法により定められた残業手当は、平日は、最初の1時間のみ 1.5倍の時間給与ですが、2時間目以降は2倍になります。休日(会社の定める休日)は1~8時間目は2倍、9時間目は3倍、10時間目以降は4倍にもな ります。
例えば、運転手の場合、土曜日の午前5時から運転手を待機させ、午前5時30分に家を出てゴルフに出かけ、終わってマッサージに行って 買い物をして午後6時に運転手を解放したとしましょう。拘束時間は13時間ですが、労働法に基づく休憩時間分が差し引かれ、12時間が残業手当の対象とな ります。2×8時間+3×1時間+4×3時間=31時間となり、31時間分の労働になります。1日8時間が基準ですから、まさに4日分弱の賃金に相当する わけです。土日に働きたがる運転手が多いのはこういうわけです。
平日でも、日本人の送迎を担当する場合、朝と晩は必ず残業が発生してしまいます。通勤手段の確保は、安全の確保でもありますから、避けようのないことですが、送迎だけに使用せず、日中の社内業務に積極的に転用したいものです。
このような状況で起こりがちなのが、給与の逆転現象です。たとえば、オフィスで働く新卒(大学卒)の給与ならば、運転手の給与の方が上になってしまうこと は決して珍しくありません。管理者・経営者からすると複雑な思いがするのではないでしょうか。また当然ですが、運転手の給与については、特に他の従業員に 漏れないようにしなければなりません。運転手という職種は、オフィスで働く者からは下に見られることの多い職種です。自分の給与が運転手の給与より低いこ とに対して、プライドが刺激される従業員は多いはずです。また運転手同士であっても、誰の送迎を担当するかで残業時間に差が出てきますから、こちらもロー テーションするなどの工夫が必要かもしれません。
インドネシアでは、連続勤務に対する法律的な制約はありません。平日に続いて土日も ずっと出勤させても残業手当さえきちんと払えば、法律上問題になることはありません。だからといって連続勤務させても、誰のためにもなりません。やはり運 転手にも疲れがたまりますから、注意力が散漫になり、事故を起こしやすくなります。いつもの慣れた運転手を使いたくても、休ませて別の運転手を使うことを 検討するべきかもしれません。当の運転手は稼ぎたいがために、「出勤OKです」「体は大丈夫です」などといいますが、現実問題として、わが身の安全を第一 に考えた場合、最低でも週に1日は休ませるのがベストと言えるでしょう。
(時事速報インドネシア便掲載)