第99回 「宗教と雇用のかかわり」
Author : セルナジャヤ 蛇草
Posted: 2013-10-11 00:00:00 | Category: 時事速報インドネシア
Share this post :
インドネシアを語る上で外せないのが、宗教とのかかわ り方でしょう。採用時に宗教を指定することはタブーとされていますが、雇用や就業規則の作成にあたっては、配慮せざるを得ない事項です。また宗教というと イスラム教だけが取り上げられがちですが、もちろんイスラム教徒以外への配慮も必要です。どのような場面で宗教がかかわってくるのでしょうか。
・採用にあたって
宗教を指定しての募集はタブーですが、一般的な履歴書には記述欄がありますし、信仰している宗教について尋ねることは問題ありません。
女性社員のジルバブ(イスラム教徒が頭に巻くスカーフ)についても、会社側が不用意にジルバブをしないほうがよい、などと言ってしまうと従業員の反感を 買ってしまいますので注意が必要です。ただし、業務上の理由、例えば製造業のオペレーターで機械に巻き込まれる危険がある場合などには、理由をきちんと説 明する必要があります。
・食事について
イスラム教徒にとって豚肉がタブーなのは周知の事実ですが、キリスト教や仏教において も、食事に関する制約がないわけではありません。例えば、キリスト教のある宗派の場合、金曜日には自分の好きなものを食べない、という自分自身への修練の ようなものがありますし、仏教の場合は、肉や魚など生き物を食べない日というものがあります。また、宗教かどうか明確ではありませんが、地方によっては近 親者が亡くなった場合には一定の期間生き物を口にしない、という習慣もあります。
現実的に、このような制約が問題になる場合は少ないとは思いますが、ローカルのスタッフやクライアントと食事を共にする場合に、宗教上の食べ物に関する制約を相手が気にする場合には、快く理解を示しましょう。
・ラマダン(断食月)時の扱い
この時期のイスラム教徒に対する配慮については、第95回「ラマダンに求められる配慮」で述べた通りです。ただし、始業時間や休憩時間の変更などの特別措 置を全従業員に適用するのか、あるいはイスラム教徒だけに限定するのかは会社によって異なります。工場などではもともとシフト制ですから全従業員に適用と なりますが、オフィスの場合には会社によって異なるようです。例えばサービス業の場合には、イスラム教徒の場合は始業時間を早め、それ以外の宗教は通常勤 務とする会社があります。管理は面倒ですが、結果的に会社の営業時間が延び、お客様に対するサービス向上につながりますから、会社側にもメリットがあると 言えます。
ここで重要なのは、ラマダン時の特別措置をイスラム教徒限定にするのか、全従業員に適用するのかを、あらかじめ明確に通知しておくことです。そうでないと、各々が自分に都合の良いように解釈していまい、混乱が生じる元になります。
宗教に無頓着な日本人には理解しがたいかもしれませんが、インドネシアにおいて宗教は優先されるべきものと考えられています。当事者たちは真剣であり、その分、こじらせるとやっかいな問題です。従業員が宗教を理由に何かを言ってきた場合、頭から否定せず、じっくり話を聞くことで穏便に治めるようにしま しょう。排除することができない部分である以上、うまく付き合っていきたいものです。
(時事速報インドネシア便掲載)
Author : セルナジャヤ 蛇草
Posted: 2013-10-11 00:00:00 | Category: 時事速報インドネシア
Share this post :
Tweet |
第99回 「宗教と雇用のかかわり」
【インドネシア雇用事情】第99回 「宗教と雇用のかかわり」インドネシアを語る上で外せないのが、宗教とのかかわ り方でしょう。採用時に宗教を指定することはタブーとされていますが、雇用や就業規則の作成にあたっては、配慮せざるを得ない事項です。また宗教というと イスラム教だけが取り上げられがちですが、もちろんイスラム教徒以外への配慮も必要です。どのような場面で宗教がかかわってくるのでしょうか。
・採用にあたって
宗教を指定しての募集はタブーですが、一般的な履歴書には記述欄がありますし、信仰している宗教について尋ねることは問題ありません。
女性社員のジルバブ(イスラム教徒が頭に巻くスカーフ)についても、会社側が不用意にジルバブをしないほうがよい、などと言ってしまうと従業員の反感を 買ってしまいますので注意が必要です。ただし、業務上の理由、例えば製造業のオペレーターで機械に巻き込まれる危険がある場合などには、理由をきちんと説 明する必要があります。
・食事について
イスラム教徒にとって豚肉がタブーなのは周知の事実ですが、キリスト教や仏教において も、食事に関する制約がないわけではありません。例えば、キリスト教のある宗派の場合、金曜日には自分の好きなものを食べない、という自分自身への修練の ようなものがありますし、仏教の場合は、肉や魚など生き物を食べない日というものがあります。また、宗教かどうか明確ではありませんが、地方によっては近 親者が亡くなった場合には一定の期間生き物を口にしない、という習慣もあります。
現実的に、このような制約が問題になる場合は少ないとは思いますが、ローカルのスタッフやクライアントと食事を共にする場合に、宗教上の食べ物に関する制約を相手が気にする場合には、快く理解を示しましょう。
・ラマダン(断食月)時の扱い
この時期のイスラム教徒に対する配慮については、第95回「ラマダンに求められる配慮」で述べた通りです。ただし、始業時間や休憩時間の変更などの特別措 置を全従業員に適用するのか、あるいはイスラム教徒だけに限定するのかは会社によって異なります。工場などではもともとシフト制ですから全従業員に適用と なりますが、オフィスの場合には会社によって異なるようです。例えばサービス業の場合には、イスラム教徒の場合は始業時間を早め、それ以外の宗教は通常勤 務とする会社があります。管理は面倒ですが、結果的に会社の営業時間が延び、お客様に対するサービス向上につながりますから、会社側にもメリットがあると 言えます。
ここで重要なのは、ラマダン時の特別措置をイスラム教徒限定にするのか、全従業員に適用するのかを、あらかじめ明確に通知しておくことです。そうでないと、各々が自分に都合の良いように解釈していまい、混乱が生じる元になります。
宗教に無頓着な日本人には理解しがたいかもしれませんが、インドネシアにおいて宗教は優先されるべきものと考えられています。当事者たちは真剣であり、その分、こじらせるとやっかいな問題です。従業員が宗教を理由に何かを言ってきた場合、頭から否定せず、じっくり話を聞くことで穏便に治めるようにしま しょう。排除することができない部分である以上、うまく付き合っていきたいものです。
(時事速報インドネシア便掲載)