第77回 「車の貸与」
Author : セルナジャヤ 森
Posted: 2011-12-15 00:00:00 | Category: 時事速報インドネシア
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Author : セルナジャヤ 森
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第77回 「車の貸与」
第77回 「車の貸与」 |
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インドネシアではマネジャークラスの社員に対し、車を1台貸与するケースがあります。ではなぜ、車を与えなければならないのでしょうか。その背景について解説します。 ◇車文化への強い依存 日本では営業用の車を会社が所有する場合も、高級の役員以外は車を貸与されることはなく、一般社員は公共交通機関を利用するか、徒歩や自家用車で通勤することを前提としています。一方、インドネシアでは歩道や横断歩道が極端に少ないなどインフラ整備が行き届いておらず、「車で移動することを前提とした都市づくり」または「歩行者を考えない都市づくり」と言えるほど、歩いて目的地へ向かうことが困難です。そのため「歩く」ことに強い抵抗を示すインドネシア人特有のプライドが生まれたと考えます。 インドネシアの車貸与の文化は地場企業、国営企業や政府が発祥と言われており、それら企業や政府が役職者クラスに対し、車を会社や国の経費として貸与していた風習が、日系を含めた外資系企業に広まったと考えられています。 その文化が浸透している今では、特に有能な人材(マネジャークラス以上)を採ろうとすると、「今の会社では車を貸与されている」「貸与がなければ入社しない」「貸与がないのであれば、相応の手当をいただきたい」と主張し譲らず、それを理由に入社を拒むことや、企業側が採用を断念することもあるようです。 ◇車の貸与は郊外のメーカーが多い これはジャカルタに限らず、第二の都市スラバヤでも同様に起きています。都市内に事務所を構える企業では、日本人を除く全従業員に対し車を貸与しないケースが大多数となりますが、近郊のメーカー企業では、特にマネジャークラス以上の人材に対し、車の貸与を約束しなければ獲得が難しいことがあります。 都市部への通勤はさまざまなアクセスがあり、公共交通機関も多く利用できること、そして「大都市で働いている」という優位性が挙げられるのに対し、近郊では、公共交通機関が少ない上に工業団地内の通行が認められていないこともあり、「車の貸与」を条件に転職先を求める人材が必然的に多くなるという背景があります。 また、バイク通勤をする一般従業員は多いものの、女性のバイク通勤者は比較的少ないようで、従業員側が会社へピックアップバスを求めることも多いようです。 ただし、マネジャークラスに至っては、会社が所有するピックアップバスを利用できるとしても、プライドが先行するためか、車での通勤を強く求めるようです。 ◇車の確保について 車を所有すると「資産」として課税対象となるため、特に設立間もない企業など長期的な運用のめどがまだ立たない場合、一般的にリース会社を経由して利用することが多いようです。 ◇運転手を付けるべきか 通勤用の車に対し、外国人従業員やインドネシア人のディレクタークラスを除いては、運転手は付けないのが一般的です。ただし、不特定多数の取引先を持つ企業では、効率化を図るために営業車に運転手を付ける傾向があります。 以前、日本を訪問したインドネシア政府の役人が「なぜ我々が歩かなければならないのか」と日本の政府担当者へ不満を漏らしたという話を聞いたことがあります。また、かく言う筆者も先日、日本出張で全国5都市を回った際、棒になりそうな足の痛みに「車があれば…」と嘆くあたり、インドネシアの文化になじんでしまったことを痛感します。 |